粉雪
「…ふ~ん、商売してんだ。」


関わりたくなかったあたしは、それ以上は何も聞かなかった。


再び戻した目線は、窓の外を捕らえる。


いつまで経ってもやむ気配のない雨は、あたしの気分を憂鬱にさせた。



『…や、つーか、個人事業者?
まぁ、確かに商売はしてるけど。』


「…あっそ。」



“個人事業者”とか言ってる時点で、怪しさは増した。


だけど、興味すらない。



「…アンタ、堅気なんでしょ?」


『お前、恐ろしい言葉使うなよ!
堅気に決まってんじゃん!
ヤクザに見える?』



見えないから、余計に正体不明なんだよ。



「…なら、良いけど。」


『良くねぇだろ~!』


そう言いながら、隼人は言葉を続けた。


『最近は、ヤクザよりも堅気のが危ねぇの多いぞ?
ヤクザは下手なこと出来ねぇからな。』


「…じゃあ、アンタも危ないんだ。」


『…俺、危ないヤツに見える?』


キョトンと聞いてきた隼人に、ため息をついて言葉を掛ける。



「…怪しいヤツには見える。」


『あははっ!そっか、俺、怪しいんだ!(笑)』


窓の外に煙草を指で弾いて飛ばし、隼人はこちらに笑顔を向けた。


そんな顔に、あたしの口元は引き攣るばかりだ。




「…てゆーか、この辺でいいわ。」


『いやいや、家まで送っていくから!
また濡れたら意味ねぇじゃん!』



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