粉雪
『―――お姉さん、一人~?
暇してるんなら、俺らと遊ばない?』


上から声を掛けられ、目線だけを上に上げた。


そこには、ナンパ男らしき二つの顔。



「…無理。
つーか、キモい。」


あからさまに口元を引き攣らせて言ってやった。


それだけ言い、あたしは再び見つめていた鏡へと視線を戻す。


あたしは、こんなのに構ってるほど暇じゃない。



『…んだと、てめぇ!』


その瞬間、男の顔色が変わった。



『トシ!タンマ!!』


その瞬間、制止するようにロン毛の方の男が声を上げる。



『…お前、千里じゃね?』


「―――ッ!」


そしてあたしを指差し、戸惑いがちに聞いてきた。


恐る恐る顔を上げあたしは、目を見開いた。



「…アンタは…!」


制止したロン毛の男に、言葉を失くした。


あたしは、この男を知っている。


思い出したくない過去が、走馬灯のように蘇ってきて。


ザワつく胸を、隠しきれない。



『やっぱそうだ!
いやぁ、変わりすぎててわかんなかった!』


「―――ッ!」


喜んだ男は、馴れ馴れしくあたしの隣に腰掛けて煙草を咥えた。


その瞬間、気持ち悪くなって。



「近寄らないでよ!」


背筋に嫌な汗が流れる。


こんなに暑いのに、血の気が引いているような感覚さえ覚えて。


だけど男は、お構いナシにあたしに顔を近づける。



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