粉雪
『へぇ~!コイツ、指輪してんじゃん!
彼氏にバラしても良いの~?』


「―――ッ!」


薄汚い顔を近づけながら、坊主の男はニヤリと笑う。


もぉ、逃げられないんだと思った。


隼人にだけは、死んでもバレちゃダメなんだ。




「…何が言いたいの?」


唇を噛み締め、その目を睨む。


だけど今度はロン毛が笑い、低く呟いた。



『大人しくしてりゃ、すぐ済むって!』


「―――ッ!」


立ち上がった男は、不敵に笑った。


触れられた肩が気持ち悪くて、心臓が早くなって。


隼人に助けて欲しかった。


だけど、こんなの見られたくない。


隼人にだけはあんな過去、知られちゃダメなんだ。


だけどその瞬間、あたしの腕は捕らえられ。


持っていた鏡は地面に落ち、パリンと音を鳴らす。


まるであたしみたいに、その姿は粉々になった。


全身を、恐怖心が駆け巡る。



「痛い!!離してよ!!」


精一杯の力で抵抗した。


だけどあたしを掴む手は緩むことはなく、更にその強さを増して。


痛くて、怖くて。


こんなヤツラに、ヤられたくなんてない。



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