粉雪
『…説明して?』


「―――ッ!」


あたしをソファーに座らせ、隼人はゆっくりと口を開いた。


だけどあたしは、すがるようにその瞳を見つめ返す。



「違うんだよ?
あんなの全部、デタラメだから!!」


必死で取り繕った。


嫌われたくなかった。


隠し通せるなら、隠したかった。


だけど隼人は、あたしから目線を外す。



『…ホントの事言えよ。
別に、何も思ったりしねぇから。』


「―――ッ!」


ため息を混じらせた隼人に、瞬間、全てを諦めた。


泣かないようにと唇を噛み締め、ゆっくりと言葉を紡ぐ。




「…あたし、昔援助交際してた…。
ロン毛の方と知り合ってからは、美人局に変えた。」



もぉ、全てを捨てた。


全部、自分のしてきたことだから。



「…アイツにナンパされたのがキッカケだったんだよ。
アイツは当時、オヤジ狩りしてたんだけど、段々金持ちがいなくなったらしくて。
あたしもヤるの嫌だったから、アイツの誘いに乗った。」


隼人の顔なんて、見ることが出来なくて。


張り詰めた空気が、ただ息苦しくて。



「…でも、それも長くは続かなくて。
警察が目を光らせだしたから、それからは普通のバイトに変えて、アイツと縁を切ったんだ。」



隼人は何も言わず、ただ黙ってあたしの話を聞いていた。


そして咥えた煙草に火をつけ、ゆっくりと聞いてくる。



『いくらでヤらせてたの?』


「…3万。」



もぉ、隠すことは何もない。




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