粉雪
『…ちーちゃん、馬鹿だな…。
3万なんかで、ヤらすなよ。』


「―――ッ!」


隼人は悲しそうに笑いながら、あたしの瞳を捕らえて。


だけどあたしは、逃げるように視線を逸らす。



「…ごめん…」


ただ、こんな言葉しか言えなくて。



「…引いたでしょ?
ごめんね?さよなら…。」


涙は見せず、少しだけ口元を上げた。


言ってて血の気が引くのがわかる。


だけど隼人は、そんなあたし向かって声を上げて。



『勝手に話終わらすなって!
誰も、別れ話してねぇだろ?!』


「―――ッ!」


瞬間、驚いて目を見開いた。



「…でも…!」


だけど隼人は、あたしの言葉を遮る。


そして、優しく言ってくれた。



『…今のちーちゃんは違うだろ?
俺は、今のちーちゃんが好きだから。』


一度伏せた目をあたしに戻し。


『それに俺は、自分のこと棚に上げて話せる様な男じゃねぇから。』


「―――ッ!」



お願いだから、優しくしないで!


あたしは隼人なんかよりよっぽど汚い…。



「違う!!」



自分のしてきたことなのに、こんなに後悔するなんて…。


隼人と出会うって分かってたら、あんなことしなかった…。




『…ごめんな?
ただちょっと、悔しいだけだから。
でも、俺の中ではちーちゃんは何も変わらないよ…?』


「…隼人…!」


涙ばかりが溢れた。


何で隼人は、こんなあたしに優しくするのかわかんない。


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