粉雪
「…ご心配どーも。
けどあたし、怪しい男に家教えるほど馬鹿じゃないから。」


嫌味のつもりで言ってやった。


睨み付けるあたしに、隼人はため息をつく。



『…わかりました。
怪しい男はこの辺で退散します。』


「―――ッ!」



あたし、悪いこと言ったかなぁ?


先ほどまでは強引だったのに、

今度は簡単に引き下がる隼人に、何故か少しだけ胸が痛んだ。


泳がせる目を伏せるようにして、ドアに手を掛ける。




「…今日、ありがと。」


だけど罪悪感から、こんな言葉が口をついた。



『おー!今度からちゃんと、傘持っとけよ?』


コクリと頷いて車から降り、早足で家の方に急いだ。







―バタン!

交差点からすぐのアパートがあたしの家だ。


ドアを閉め、少し早くなった心臓を落ち着かせた。



「…ただいま。」



返事は……ない。



母一人、子一人の生活には、いい加減慣れてしまった。


母親は、相変わらずスナックをしているため、夜中は不在。


真夜中に帰ったとしても、誰もあたしの心配なんかしてくれる人はいないんだ。





♪~♪~♪

「―――ッ!」


テレビを付けようとした矢先、あたしの携帯が鳴った。


相手の検討は、つかない。


放り投げたバッグの中をあさり、携帯を持ち上げた。


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