粉雪
―――それから1ヶ月が過ぎ、季節は12月を迎えた。


新人の香澄も、少しは仕事に慣れたらしい。


たまにムカつく発言もあったが、

この頃になると“お嬢様はこんなもんだ”って割り切っていた。


諦めが早いのは、あたしの得意分野だしね。




「―――オーダー聞いてきてよ!」


『…え?何…?』


忙しい時間帯に、香澄は上の空だった。


腹が立ちあたしは、差し出した伝票を下げて眉をしかめる。



「良いよ、あたしが行くから。」


『ごめん!大丈夫だから!!』



何かが変だった。


いつもの香澄とは、まるで違う。


バイトも何とか終わり、それとなく探りを入れた。



「…何かあったんでしょ?」


『…いやっ、その…』


香澄は言葉を濁すように目線を泳がせた。



「…別に言いたくないんなら良いよ。
ただ、隠したいんなら顔に出さないでくれる?
アンタのフォローするために、あたしが働いてるんじゃないから。」



あたしはただのバイトでも、それが“任された仕事”なら容赦はしない。


その辺は、だんだん隼人に似てきたと、自分でも思う。


あたしの言葉に諦めたのか香澄は、ため息混じりに言葉を選ぶ。



『…ごめんね…?
じゃあ、話だけでも聞いてくれない…?』



面倒なことになる予感は、最初からあった。


だけど、仕方ない。


ため息をつき、ファミレスの近くにある公園に向かった。



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