粉雪
「…そっか、それで?
いくら請求されてるの?」


『…100万円…。』


「ありえない!」


その金額を聞き、耳を疑った。


言うあたしに、香澄はついには涙さえも浮かべてしまって。



『そうだよ、ありえないよ!!
いくらあたしでも、そんなお金払えるわけが無い!!』


“パパやママにだって、言えないよ!!”と言い香澄は、唇を噛み締める。



「…で?どーしたいの?」


『…助けてよ、千里ちゃん…!』


「―――ッ!」



正直、迷った。


ここまで聞いて、逃げるわけにもいかない。


でも、隼人を紹介すれば、彼女にはもっと辛い現実が待ってるかもしれない。



「…何が起こっても、何を言われても、受け止めること出来る?」


しっかりと香澄の目を見据え、ゆっくりと聞いた。



『うん!
ありがとう、千里ちゃん!!』


分かってるのかいないのか、香澄はあたしの手を取って。


だけどあたしは、希望の光でも見えたのだろう香澄に最後に問い掛ける。



「…これから起こるかもしれないことは、笑ってて済むことじゃないかもしれなけど…。
それでも良いんだよね…?」


『大丈夫。
友達にも好きな人にも裏切られたから…。
これ以上辛いことなんて、ないよ…。』


「…わかった。」


そう言うと、あたしは携帯を取り出した。



あたしも母親に捨てられたから。


香澄と自分を、知らない間に重ねてたのかもしれない。



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