粉雪
着信:隼人

「―――ッ!」


ディスプレイを確認して、思わず目を見開いた。


まだ、着信拒否にしてないのに。



―ピッ…

普段なら、完璧シカトなはずなのに、気まぐれで通話ボタンを押してみた。


あのまま着信拒否にしたら、何となく罪悪感が残る。



「…何?」


『ちーちゃん、ちゃんと帰った?』


「…うん。
てゆーか、何?」



あたしの心配?



『…いや、帰り道暇だったし。』


「あっそ。」



だけどそれは、あたしを送った所為でもある。




『なぁ、日曜とか暇?』



誘われてんのか?



「…日曜バイト。
てゆーか、水曜以外は、バイト掛け持ちで入れてるから。」


『ハァ?!ちーちゃんって苦学生?(笑)』


その言葉に、さすがのあたしも口元が引き攣る。


聞こえるほどのため息をつき、言葉を掛けた。



「…アンタ、何でそんなに失礼なの?
“苦学生”ってわけでもないけど、学校が自由登校だし、お金貯めたいの。」



自分のテリトリーでもある家の中だと、

少しだけ安心して自分のことを話すことが出来る。


嘘をつけば良かった筈なのに、そんな簡単なことを思いつくことも出来なかった。




『…欲しいもんがあるとか?』


「…そんなんじゃないよ。
お金貯めて家出たいし。」



少しの時間でも、母親と顔を突き合わせて話をしたくはない。


母親の忘れて行った口紅を眺めると、自然と本当のことを話していた。



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