粉雪
『ちーちゃん、美味しい話さんきゅー♪』


「…何で引き受けたの?」


『楽に金が入るから。』



この話は、隼人にとっては“シノギ”でしかなく、

“あたしの友達”を助けるためなんかじゃなかった。


最初からそのつもりで頼んだのだから、“ヒドイ男”だとは思わなかった。


だけど改めてそう言われると、やっぱりこっちが現実なんだと思い知らされる。


そんなあたしをよそに隼人は、笑顔を混じらせる。



『…しかしちーちゃん、信用されてんだな。』


煙草を咥えた隼人は、思い出したようにそう言った。



「…知らないよ。
あたしは別に、誰も信用しないから。」


『…俺も?』


「ははっ!
あたしを変えたヤツが言うなよ。」


『あははっ!そりゃそーだ。
ちーちゃんは、一生俺だけ見てりゃ良いよ。』



言われなくても、そーしてるよ。


だけど、こんな小さいとさえ思えた事件さえなければもしかしたら、

少なくともあんな未来だけは避けられたのかもしれないね。


まるで、運命に導かれてるみたい。


今思うと、全てがあの日へのカウントダウンだとさえ思えるんだ。


誰が、何が悪かったのかなんて、もぉわからないけど。




それから1週間が過ぎた―――…


あれから香澄とは何度か同じシフトでバイトに入ったが、

お互いあのことには触れなかった。


ただ待つしか出来ない日々が、過ぎ行くのみ。




< 151 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop