粉雪


事件が動いたのは、その日のバイト終わり。

持ち上げた携帯に、ランプが点滅している。



不在着信:隼人

「―――ッ!」


急いで隼人に電話を掛け直した。


支配するのは、嫌な予感ばかり。


解決を焦る気持ちと、突きつけられるであろう現実への恐怖。



―プルルルル、プルルルル…

『はいよー。
終わった?』


「…うん。」


『…今日、復讐女と一緒?
悪いけど、今から言う場所に連れて来てもらえない?』



香澄のことだ!


ついに、この時が来たんだ。



「…わかった。
どこに向かえば良い?」


場所を聞き、電話を切った。


一呼吸置きあたしは、まだ着替えをしている香澄をロッカールームから呼びつけた。



「…これから、あたしと一緒に来てもらうから。
あの話に、カタ付けるみたい。」


『…わかった。』


一瞬驚いた香澄も、覚悟を決めて低く呟く。


香澄が閉めたロッカーの扉の音が、誰も居ない部屋にパタンと響く。


お互いに、それ以上言葉はない。


香澄は、一体どのようなことを想像しているだろうか。


そして彼女は、想像とは違うであろう現実を、受け止めることが出来るだろうか。


歩き出したあたしの後ろを、無言の香澄が続いた。



指定されたのは、スクラップ工場。


車内を包むのは、重苦しい空気ばかり。


近づくにつれ青ざめる香澄に、あたしは相変わらず何も言えなかった。


全てが、“自業自得”の結果。


傍観者のあたしが、口を出すことじゃない。

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