粉雪
『…そろそろ時間だな。
マツ、こいつら連れて行け!』


『待って!
その二人、どーなるんですか?!』


言う隼人に、香澄は声を上げた。


その言葉に、隼人はため息を混じらせる。



『…俺のシノギになるんだよ。
まぁ、アンタにはもぉ関係ねぇだろ?』


『…そう…ですか…。』


“関係ない”と言われれば何も言えないのであろう香澄は、

そのまま言葉を飲み込んだ。



『…俺が50ごときで引き受けると思う?
利息が取れそうな話だから、アンタに乗っただけだ。
勘違いすんなよ?』


隼人の目は、冷酷ささえ帯びていて、あたしは思わず目を背けた。



『…ハイ…』


香澄のか細い声が消えて。


全てはもぉ、あたし達には手が届かない。



『…マツ、相手さんが待ってんだろーが!早く行け!
で、終わったらいつもの料亭に来い!』


『…ハイ、失礼します。』


そう言うと、マツはグッタリしている男女を引きずりながら、

自らの車まで運び、その後部座席に押し込んだ。


香澄は、走り去って行くマツの車を見つめ続けていた。




『…カタ付いたな。
帰ろう。』


『待ってください!』


全てを見届け車に向かおうとするあたしと隼人を、香澄は急いで制止した。




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