粉雪
『…まだ何かあんの?
また騙されたか?(笑)』


振り返り隼人は、小馬鹿にしたように笑った。



『…あたしにも、お店を紹介してください…!』


「ハァ?!
アンタ、自分が何言ってるかわかってんの?!」


その言葉には、思わずあたしが声を上げた。


だけど隼人はあたしを制止し、そんな香澄の瞳を見据える。



『…ちーちゃん、タンマ。
アンタ、何が言いたい?』


『…あたし、もぉ男に騙されたくないんです…。
夜の店で…働きたい…!』


「―――ッ!」


耳を疑うような台詞だった。



『お嬢様の考えてるような世界じゃねぇよ。
帰ってテレビでも見てろ!』


必死そうな香澄の言葉に、だけど隼人は吐き捨てるように言う。



『待ってください!
あたし、退学届け書いたんです!
本気です!あいつらを見返したい!!』


「―――ッ!」



香澄の考えていることが、あたしにはまるでわからなくて。


戸惑うように、目線を香澄から隼人へと移した。



『…本気みたいだな。
わかった、俺の知ってる店紹介してやるよ。
その代わり、俺の顔潰すんじゃねぇぞ?』


『ハイ!!』


一枚の名詞を差し出した隼人に、香澄は力強く声を上げた。



『ちーちゃんは、その女送ってから料亭来いよ。
俺は先に行ってるから。』


「…うん。」


隼人を見送る香澄はまた、深々と頭を下げ、

あたしはそんな香澄を無言で見つめていた。





「…アンタ、人生台無しにする気?」


『違うよ?
あたしは、男達に復讐したい!』


香澄の目に、迷いはなかった。



< 156 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop