粉雪
帰りの車内、重苦しい空気を放つあたしとは正反対に、

香澄はどこか吹っ切れたような顔をしていた。



『…本田さんって、千里ちゃんの彼氏でしょ?(笑)』


「違うよ。」



“本田さん”は、あたしの彼氏なんかじゃない。



『隠さなくても良いのに~!
でも、本当にありがとう!!
あたし、千里ちゃんだけは、一生信じるから!!』


「…そりゃどーも。
でも、“復讐したい”なんて言うアンタを、あたしが信じることはないだろうね。」



信じれば、あたしまで“復讐”されるかもしれない。




『…そうだよね。
でもあたし、頑張る!!
絶対、男がひれ伏すくらいの女になるからね!!』


「…まぁ、せいぜい頑張れば?
その代わり、続かなくてもファミレスにだけは戻ってこないでね?」


横目に見た香澄の顔はどこか嬉々としていて、

それが余計にあたしの不安を増大させる。



『あははっ!大丈夫だよ?
あたし、こーみえても根性座ってるって言われるし!』


「…そーですか。」


誰に言われてるのかは知らないが、あたしはそんな香澄にため息をついた。



「…人生狂っても、アンタが選んだことだから。
誰の所為でもない。
それだけは、覚えときな?」


『わかってるよ!』



それはまるで、自分自身に言い聞かせているようだ。



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