粉雪
『…ごめんな?
俺、ちーちゃんを傷つけたい訳じゃねぇんだよ…。』


あたしの涙の痕に気付いた隼人は、そっとあたしを抱き締めて。


その瞬間、いつものスカルプチャーの香りに包まれる。



『…マツがちーちゃん見る目は、普通じゃねぇから…。
ちーちゃんのこと、誰にも取られたくねぇだけなんだよ…!』


「…隼人…」


振り絞るような声で言った隼人に、切なく胸が締め付けられて。



『…ちーちゃん、俺の傍から離れないで…?
俺だけ見てて…?』


それはまるで、あたしに縋り付くようにさえ聞こえた。


あたしは、どこへも行ったりなんかしないのに。



「…あたしは今までも、そしてこれからも、ずっと隼人のものだから…。
あたしには、隼人が居れば何も要らない…。」


『…ありがとな、ちーちゃん…。』


あたしの言葉を聞き、隼人は安心したように崩れ落ちた。


隼人の孤独は、あたしなんかよりもずっと大きいものなんじゃないか。


そんなことは、薄々感づいていた。


隼人も同じように、あたしなしでは生きられないなら、

あたしだけが残った意味も、少しはあったのかもしれないね。


“一生”だとか、“ずっと”だとか、思い出す度に胸が苦しくなる。


でもあたしは、その約束を永遠に守り続けるよ?


隼人も一生、あたしの胸の中にいるよね…?




それから隼人は、あたしを抱いた。


自分のものである“印”をつけるように、何度も何度もキスをした。



『…ちーちゃん、凄ぇ綺麗だよ?
誰にも見せたくねぇから…!』


「―――ャ!!
…ァアァァア!!」


そして、一緒に絶頂を迎えた。


ただあたしは、隼人を救いたかっただけなんだ。


吐き出して分け合えば、隼人を楽にしてあげられると思ってたから。


あたしには、そんなことしか出来なかったから。



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