粉雪
―――ある日、家に帰ると、隼人が一人で金平糖を食べていた。



『お疲れ~!
ちーちゃんも食う?』


「…何で金平糖?」


『別に(笑)』


半分ほど食べられた袋をあたしに手渡した隼人は、そのまま煙草を咥えた。


手の平に乗せられたそれを見て、あたしは首をかしげるばかりで。



『ちーちゃんも糖分取らなきゃ!』


「…隼人も糖分必要なの?」


『てゆーか、ちーちゃんのために買ってきたから♪』


「…じゃあ、アンタが食うなよ!」


仕方なく、金平糖を一粒口に入れた。


テレビをつけようと目線をやると、

ガラステーブルの上には、コルクで蓋がされたガラス瓶の中に、

一粒だけ入った金平糖。



「…隼人、アレ何?」


指を差し、問い掛けた。



『飾ってみた!(笑)』


「…意味わかんない!
じゃあ、全部入れとけば良いじゃん!」


『…うん、また来年ね?』



目線はどこか、遠くでも見つめるように言った隼人に、瞬間、心臓が音を立てた。



その瞬間、全て気付いた―――…


12月28日は、あたしが赤ちゃんを殺した日。


隼人は気付いてたの…?




『…ちーちゃん、どしたの?』


「―――ッ!」


ハッとして、急いで笑顔を作って向ける。



「え?何でもないよ!
ご飯作るね?」



赤ちゃん、要らないんじゃなかったの?


何で、弔いみたいなことするの…?


隼人の考えてること、全然わかんないよ。



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