粉雪
隼人が全てを語る日は、まだもうちょっとだけ先だね。


あの金平糖は、今もあたしが一人で入れ続けてるよ?


隼人は何も話さなかった。



“何も聞かないし、何も言わない”


いつしか掟のように体に染み付いて、

やがてそれは、あたし達の崩壊に繋がっていく。


言ってくれなきゃわかんないよ。


隼人の過去も、子供を拒み続けた理由も。


そして何故、あんなことをしたのかも…。



ただ、この時のあたしは、覚えててくれて嬉しい気持ちと、

“じゃあ、何で?”って気持ちしかなかった。


隼人には、何も背負わせたくなかったのにね。


隼人は、あたしの知らない所で、

イッパイ悩んで、イッパイ苦しんで来たんだね。


言ってくれれば良かったのに…。


今更聞かされても、もぉ遅いよ―――…





『…なぁ、何でちーちゃんは笑ってられるの?』


隼人の目はどこか寂しげで、あたしは理由もわからずただ不安になって。


自然と後ずさるあたしの腕を、隼人は捕らえるように握り締めた。



「痛いよ!」



そして隼人は、苛立ちをぶつけるようにあたしを抱いた。



隼人はただ、怖かっただけなんだよね?


あたしを失うことが、何より怖かったんだ。


でもあたしは、そんな隼人に何も気付けなかった―――…



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