粉雪
♪~♪~♪

着信:隼人


全てが終わり、あたしがホテルに戻っていると、

頃合を見計らったように隼人からの電話が鳴った。




―ピッ…

「あーい。」


『ちーちゃん、今どこ?!』


鼓膜が破れそうなほど怒鳴られて、思わず耳に当てていた携帯を離した。


のん気なあたしとは、まるで正反対だ。



「…暇だし、散歩してた。
もーすぐホテル着くよ?」


『ハァ?!
何で勝手にいなくなるんだよ?!
とにかく、俺も今、下にいるから!』



自分が“いってらっしゃい”って言ったくせに!


電話を切り、頬っぺたを膨らませた。


でもきっと、隼人はあたしを見て驚いてくれるよね?


着慣れない服を纏い、小走りにホテルに戻った。






「あ!隼人~!」


ロビーでイラついたように煙草を吹かす隼人を発見し、笑顔を向けた。



『…ちーちゃん…?』


キョトンとしている隼人は、不思議そうにあたしの名前を呼んで。



『え?何で浴衣??』


「去年、ノリで買ったの!
でも、着る機会なかったしさぁ。
隼人寝ちゃったから、受付で着付けできる美容院聞いてね?」


見せびらかすように、袖を上げた。



「可愛い?」


『うん、すげぇ可愛いよ!』


「やったぁ♪」


少しだけ照れた様子の隼人に、あたしまで嬉しくなってしまった。


ちょっと恥ずかしいけど、着て良かった、って。



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