粉雪
「うっさい!
もぉ、絶対やってあげないからね!」


赤くなり、顔を背けた。


“可愛い♪”と笑いながら隼人は、言葉を続けた。



『またやってよ。
実は、すげぇ嬉しかったから。』


そう言うと、自分であたしの鼻の頭につけたモンブランをペロッと舐めた。


鼻ごと食べられてしまって。



「ねぇ、テレビ観てよ!
この人可愛くない?
二世タレントらしいよ?
やっぱ、親の七光りなんだろうね~!」


思わず言葉を並べてしまう。



「…あたしの親も芸能人とかだったら、今頃あたしもデビューしてるのかな?(笑)」


『…つーか、この女のどこが可愛いの?
普通にそこら辺歩いてそーじゃん。』


テレビの中で笑顔を振りまく女を指差し、隼人は眉をしかめた。



『…でも、ちーちゃんがデビューしたら、普通に困るし。』


そう言って、あたしの口にモンブランを入れてきた。


ガトーショコラとモンブランが口の中で混ざり合って、

あんまり美味しいとは感じない。



『…俺の親が、もし芸能人とかだったら、ちーちゃんどーする?』


突然聞かれ、あたしは首をかしげた。



「…わかんないけど、サインでも貰うんじゃない?
GLAYのだけど!(笑)」


『あははっ!好きだよな、ホント。』


そう言うと、困ったように笑いながら、言葉を続けた。



『…じゃあもし、俺の親が犯罪者とかだったら、どーする?』


「…え?」


よく分からない質問に、何故か心臓が妙な波を打った。



『何でもねぇよ!
ちーちゃんのガトーショコラ、美味しそうだね♪』


だけどそう言って隼人は、何事もなく笑った。



< 179 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop