粉雪
「もぉ!
ご飯っ…食べるの…!」


『…あっそ。』


そう言うと、つまんなそうにあたしから降りた。


頼むから、もぉちょっとマシに起きられないんだろうか。



『…ちーちゃん、食べれば?』


デザートのチェリーをつまみながら、その言葉はまるで嫌味にしか聞こえない。



「言われなくても食べるよ!」


『ははっ、可愛い♪』


♪~♪~♪


突然、切り裂くように隼人の携帯が鳴った。


その瞬間、嫌な予感に襲われる。


同じように隼人も、うんざりとした顔を浮かべていて。



『…マツだって…。
最悪だし。』


取り出した携帯のディスプレイを確認し、やっぱりか、って顔で眉をしかめた。


―ピッ

『―――ハイ?
アァ?てめぇに全部任せただろーが!
…ハァ?河本さんが?そんなの無理だし。
俺が今、どこに居るか知ってるだろ?!』


隼人の荒げる声が、部屋中に響いて。


さっきまでの楽しい空気なんて、今は微塵もない。


『…わかったよ。
帰えりゃ良いんだろ?
昼前には戻るから。』


ため息をつき隼人は、電話を切った。


そして申し訳なさそうに、あたしと視線を合わせて。



「…呼び出しでしょ?
仕方ないよ。」


だけど少しだけあたしは、口元を上げた。



『…ごめん…。』


「…隼人が謝ることじゃないじゃん!
良いよ、また連れてきてるんでしょ?」



ホントはこんなこと、予想していた。


少し残念だけど、あたしは大丈夫だから。



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