粉雪
―バタン!

「…どーも。」


マンションの下まで送られ、それだけ言った。



『…荷物、運びましょうか?』


「いらないから。」


顔色を伺うようなその言葉にだって、あたしは目を合わせることはしない。



『…わかりました。
失礼します。』


頭を下げたマツは、エンジンを切り、あたしに車の鍵を手渡した。



「…アンタ、どーすんの?」


『…俺は隼人さんの車に乗って帰るわけにはいきませんから…。
“明日車取りに来る”って伝えてください。』


“失礼します”


そう言って再び頭を下げ、マツは歩き出した。


足元にある荷物を見つめ、あたしはため息をついて。




部屋に戻ってバッグを整理すると、

使わなかった下着や服を、クローゼットに戻した。


テレビをつけても、音楽を流しても気分が上がらず、

相変わらず煙草の本数ばかりが増える。



それから隼人が帰ってきたのは、真夜中のこと。



―ガチャ…

「おかえり~!」


『…ちーちゃん、起きてたんだ?』


「…うん。
何かあった?」


何となく、隼人の顔が疲れ切っている様に見える。



『…うん、ちょっとね。
ちーちゃんに、話あるから…。』


「…何?」


聞くあたしに、ゆっくりと隼人はソファーに座り、

改まったように煙草を咥えて言葉を探す。



『…ちーちゃん、ちょっとの間、別のトコに住んでて?
部屋は用意してやるから。』


「…意味わかんない…!
何で?!」


突然の言葉に、目を見開いた。




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