粉雪
『…この前、ポン中がパクられたんだ。
警察が、シャブの出所探ってるらしい…。』


「―――ッ!」


そんな…!



「…嘘っ…!」


思わず、口元を押さえた。


その瞬間に頭の中が真っ白になって、言葉さえも出なくて。



『…もしかしたら、俺もヤベェかもしれねぇから…。
ちーちゃんは、逃げとけよ。』


「…何、言ってんの…?!」



…隼人が、捕まるかもしれない…


今まで散々覚悟していたはずなのに、今更リアルに恐怖が広がる。



『…ちーちゃんは、俺と居たらダメだよ。
ちーちゃんには、何の関係もないだろ?』


「…そんなの…出来る訳ないじゃん!
あたし一人残されたって、嬉しい訳ないじゃん!!」


涙を堪え、唇を噛み締めた。


“関係ない”なんて言われたって、あたしは傍に居たいんだ。



『…ごめん。
でも、ちーちゃんが危険になるだろ?!』


「…そんなの、どーだって良いよ!
あたし達は、結婚だってしてないんだよ?!」


必死だった。


今更、離れるなんてこと出来るはずがない。


「もし隼人が捕まっても、あたしは面会さえ出来ない!
それどころか、捕まったことさえ、人伝に聞かされるんだよ?!
…そんなの…耐えられるわけないじゃん!!」


『…ごめんな、ちーちゃん…。
俺だってホントは、ちーちゃんと一緒に居てぇよ!
でも、好きな女パクらせる訳にはいかねぇだろ?!』


ただ、涙が溢れて。


守られたいんじゃない。



「…ねぇ、隼人…。
あたしの人生は、あたしが決める。
あたしはいつでも、どんな時でも隼人と一緒だよ?
あたしは大丈夫だからね?」


優しく、隼人を抱き締めた。


本当は、怖くて、不安で。


だけど、“絶対に大丈夫なんだ”って、信じたかった。



『…ごめんな、ちーちゃん…。
ありがとう…。』


あたしの胸に顔をうずめながら隼人は、力なく呟いた。



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