粉雪
結局、あれから着信拒否に設定できないまま、約束の日を迎えてしまった。


隼人がうるさく言うから、

仕方なく折り畳み傘まで買ったあたしは、きっと馬鹿なんだと思う。


ついでに言えば、毎度毎度この着信を無視しないあたしは、

トコトン甘いのかもしれない。




『今、どの辺?』


「…学校の近くのすし屋の前歩いてる。」



しつこく聞いてる隼人に根負けし、昨日学校を教えてしまった。



『マジ?近くいるわ!
その裏の通りに、コンビニあるのわかる?
そこにいるから!』


「…あたしに行けって?」


『迎えに行ってやってもいいけど、学校のやつらに見られたくねぇだろ?』



何だ、ちゃんと考えてんのか。



「…わかったよ、今から向かうわ。」


ため息をついてきびすを返し、コンビニの方に足を進めた。







コンビニの駐車場には、この前会った時と同じ、イカツイ黒のセダンが止まっていた。


それを確認し、ゆっくりと足を進める。



『おー!お疲れ!!
つーか、マジで高校生だな!(笑)』


あたしを見つけた隼人は、笑いながら車から降りて歩いてきた。


掛けられたサングラスを外しながら近づいて来られると、

どう見ても危ない男にしか見えない。




「…だって、高校生だし。」


周りから見たら、あたし達は一体どんな風に見えているのだろう。


髪の毛をかき上げながら、目線を足元へと落とした。



『今日は眉毛あるじゃん!
てゆーか、化粧も薄いし!(笑)』


「―――ッ!」


ニヤついた目で見られると、何故か腹が立った。


唇を噛み締め、声を発する。



「悪かったね、学校用で!」


相変わらず、隼人の中ではあたしは、“眉毛のない女”らしい。



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