粉雪
『―――待てや!
てめぇら不法侵入だろーが!
ガサ入れてぇなら、令状出せや!』


隼人の怒声に、一瞬捜査員達の足が止まった。



『―――クッ!
女引っ張るだけだ!』


そう言うと、一人の男があたしの腕を強引に引っ張った。



「ったい!!
離せよ!!」


必死で抵抗したが、あたしがそんな力に適うはずもなくて。



『女から手ぇ離せや!
ソイツは関係ねぇだろーが!!』


瞬間、隼人は見たこともないような剣幕で怒鳴り、男の胸ぐらを掴んだ。



『―――小林!!
てめぇ、公務執行妨害付けられてぇのか?!
大人しくしとけや!!』


「隼人!やめて!!」


あたしの言葉に隼人は、唇を噛み締めてその手を離す。



『―――チッ!
女は任意なんだろ?』


『…取り敢えず、はな。』


捜査員の男は、襟元を正しながら隼人を睨み付けて。



『…さぁ、行くわよ?』


女性警官に声を掛けられ、あたしは頷いた。


そして、別々のパトカーに乗せられ、警察署まで向かう。


まるで、三流ドラマにすらならないような話。


ガッチリとあたしの左右を固め、まるで凶悪殺人犯のような扱いだ。


任意の事情聴取だというのに。


まだ起ききっていない朝の街並みが通り過ぎ、あたしは唇を噛み締めた。



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