粉雪
何度も何度も同じことを聞かれ、その度にあたしは、知らぬ存ぜぬを貫き通した。


諦めた警察は、やっとあたしを保釈した。


すっかり、太陽は真上に来ていて。


目を細めながらトボトボと家に帰り、

不安な中、隼人の帰りをひたすら待ち続けた。


腕には、あの男があたしの腕を掴んだ時に出来た痕が、生々しく残されていた。


思い出すだけでも吐きそうになる。





―バタン!

「隼人?!」


夕方になり、突然の扉の開く音に、慌てて玄関に急いだ。


見ると隼人の後ろには、マツも居た。



『ちーちゃん、無事だった?』


「…うん、大丈夫だよ。
あたしは何も言ってないから…。」


『…そっか、良かった…。』


その表情は、とても疲れ切っているようにも見えて。



『…マツも引っ張られた…。
コイツ、俺が出てくるの待ってたんだよ。』


そう言って隼人は、後ろに居るマツを差す。



「…そう…。
二人とも、大丈夫なら良かったよ。」


『マツ!上がれや!』


『ハイ。
失礼します。』


3人で、リビングに向かった。


きっと安心しているのは、あたしだけなんだろう。


隼人やマツの表情は、まだ固いままだ。




『…しかし、ちょっとヤベェな。
いつから張り付かれてたんだ?』


『…スンマセン。
気付きませんでした…。』


隼人とマツにお茶を出すと、二人は煙草を咥えて険しい表情を見せていた。


あたしなんかが、とても入っていけるような空気じゃない。



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