粉雪
『…明日も仕事だろ?
ちーちゃんは、寝ろよ。』


「…隼人は…?」


『…俺も、明日は引越しだから…。』




隼人は別に、もぉ一つ部屋を持っていた。


“アパート”と呼ばれるその部屋には、ヤバイ書類が色々あるらしい。


あたしは一度も行った事はないけど、

隼人は定期的にアパートの場所を変えていた。



「…警察、大丈夫なの…?」


隼人の服の袖を握り締めた。


隼人はまだ、警察に張り付かれてるかもしれないのに。



『…多分、大丈夫だよ。
それに、マジでヤバイのはトランクルームに入れてるから。』


「…そう、わかった。
おやすみ…。」



“何も言わないし、何も聞かない”


何度も言い聞かせ、眠りについた。




『…ちーちゃん、ごめんな…?』



傍らで隼人の声が聞こえたが、あたしは寝た振りを続けた。


あたしは隼人を苦しめるために居るんじゃない。


こんなことなら早く、あたしが別れを切り出せば良かったのにね。



次の日、まだ眠る隼人にキスをし、静かに仕事に向かった。


本当は、仕事なんてしてる場合じゃなかったけど、

それでも独り寂しく隼人の帰りを待ち続けるなんて、あたしには出来なかった。


あたしが早く、仕事辞めてれば良かったのに。


思い返す度、全てのことに後悔ばかりが募る。




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