粉雪
『ちーちゃん、絶対そっちの方が可愛いから!』


「―――ッ!」



薄い化粧を褒められても、喜んで良いのかわからない。


それに第一、濃いメイクは母親のスナックの影響だ。


素顔を隠すことで生きてきたのに、

まるでそんな人生を否定されているような気にさえなる。




『ちーちゃん、乗って!
一旦着替えに帰れよ!』


「…何で?」


『…制服のまま連れまわせないだろ?
それに、一応仕事相手と会うし。』



コイツ、“女子高生ブランド”に興味ないのか?


それを売りにしていたあたしは、どこか拍子抜けだった。




「…そんなトコにあたしを連れてってもいいわけ?」


『良いよ、ちょっと遠いし暇だから。
まぁ、話してる間は、車乗っててもらうことになるけど。』



“あたしには関係ない”


そんな気持ちで車に乗り込んだ。




「…この前の交差点から見えるアパートだから。」


相変わらず隼人の煙草を抜き取り、当たり前の様に火をつけた。


吐き出す煙に目を細めながら、少しだけ窓を開ける。



『自分の吸えよ!まぁ、良いけど(笑)
てゆーか、何で家教えてくれたの?』


「…歩くと寒いから。」



ホントに、それくらいしか理由が見つからなかった。



『あははっ!オッケ!』



隼人は何も言わず、暖房の設定温度を最高にして、風をあたしの方に向けてくれた。


それに気付いたが、何も気付かないフリを装った。


見つめる窓の外は、冬晴れの空が抜けるように青い。


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