粉雪
『ちーちゃん、明日休みだろ?
どっか行く?』


「うん!!」



それからの隼人は、出来る限りの時間をあたしと過ごしてくれた。


あたしを優先し、疲れてる時でも笑顔を向けてくれた。


だからあたしは、もぉ一度隼人を信じることが出来た。


だけどそれも、長くは続かなかった。





♪~♪~♪

鳴り響いたのは、隼人の仕事用の携帯。


いつもいつも、現実がやってきたことを告げる音。



―ピッ…

『…え?わかった?
…マジで…?
お前、嘘だったら死ぬぐらいじゃ済まねぇぞ?
多分、俺も殺される…。』


「―――ッ!」



“殺される”


そんな言葉に、一気に部屋中の空気が凍りつくのを感じて。


戸惑うようにあたしは、その顔を見上げた。



『…アイツにとって、俺は用済みなのか…?
とりあえず、また連絡するから…。
てめぇもあんまり踏み込むなよ?』


そう言うと隼人は、険しい顔で電話を切った。




「―――隼人!!
“殺される”って何?!
一体、どーなってるの?!」


必死であたしは、隼人にしがみ付いた。


だけど隼人は、嘘のように冷静で。



『…大丈夫だよ。
ちーちゃんは、何も心配することはない。』


そう言うと、優しくあたしの頬を撫でた。



「やめてよ!
あたしの心配なんかしないで!!」


振り払いあたしは、声を荒げた。


今度は本当に、隼人が死ぬのかもしれなくて。


考えるだけで、怖くて怖くて仕方がない。



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