粉雪
『ちーちゃん、出て行くな!!
約束、破るなよ!』


「―――ッ!」



“ずっと傍に居る”


自分でした約束に、縛られてしまった。


あたしはその場から逃げることも、それ以上足を踏み出すことさえも出来ず、

ただ泣き崩れるしかなかった。


悔しさや悲しさや、絶望感があたしを支配し続けた―――…




『…ちーちゃん、こんなトコに座ってたら体冷えるから。
ベッド行こう…?』


「―――ッ!」


無理やり体を起こされた。


何で、それでも隼人はあたしに優しくするの…?


冷たくされたら、嫌いになれるのに。


ただもぉ、力さえ入らなくて。




「―――ャア!!
離してよ!!触らないで!!」


必死で抵抗したのに、隼人の力には敵わなかった。


あんなにも、傍に居ることを望んだのに。


なのに今は、逃げることさえ許されないなんて。



『…拒否…すんなよ…!
俺のこと好きなんだろ?!
愛してるんだろ?!』


「―――ィヤ!!」




他の女の名前を呼ぶ口で、あたしの名前を呼んで欲しくなかった…


他の女を触った手で、あたしに触れて欲しくなった…


行為の間中、あたしは顔を覆って泣き続けた。


ホントは嫌なのに、隼人に仕込まれた体は、簡単に反応してしまう。


声なんて出したくなかった。


血が出るほどに唇を噛み締めたのに、

無理やり口を開かされ、隼人の舌が押し入ってきた。


いつからあたし達は、こんな風になってしまったんだろう。


もぉ、戻ることは出来ないのかな?




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