粉雪
『…“何やってる”って聞いたんだけど。』


「アンタに関係ないじゃん!!」


マツを睨み付けた。


だけどマツも、あたしを睨み返して。



『…こんなとこでアンタ見つけたのに、見て見ぬ振りは出来ねぇだろ?』


「そうだね。
アンタは隼人怖いもんね!」


小馬鹿にするように言った。


瞬間、マツは声を荒げて。



『そーゆーこと言ったんじゃねぇだろ?!
時間と場所考えろよ!
隼人さんじゃなくたって、心配するだろーが!!』


「…あたしが、“心配して欲しい”なんて言った?
報告したいなら、すれば良いじゃん!
結局あたしは、連れ戻されるんでしょ?!」


マツを怒鳴り散らすことしか出来ない。


本当に、言ってて悲しくなってくる。



『…アンタら、何があったんだよ…?』


マツは、戸惑うようにあたしを見つめた。



「ハッ!白々しいこと言わないでよ!
アンタは、全部知ってるんでしょ?!」


『…何の…こと…?』


明らかに目が泳いでいるマツの表情で、全てを悟った。



「…アンタ、嘘つくの下手だね。
仕事、向いてないんじゃない?」


『―――ッ!』


自傷気味に笑うことしか出来なくて。



『とにかく、送るから!』


「…痛いよ…!離して…!」


強引に引っ張られ、そのまま引きずられた。


やっぱりあたしじゃ、その力には敵わなくて。



―ドン!

『乗れ!』


「―――ッ!」


マツに睨まれ、仕方なく車に乗った。


どこまで行ったって、あたしには逃げる場所なんかないんだ、と。


言われてる気さえして、悲しくなった。



< 215 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop