粉雪
「…あたしを、どーする気?」


『…とりあえず送る、つったろ?
心配しなくても、隼人さんには黙っててやるよ。』


ため息をついたマツは、煙草を咥えた。



「あんなトコ、帰りたくないよ!
あたしは一体、何なの?!」



あたしはまるで、童話に出てくる高い塔に幽閉されたお姫様で、

王子様である隼人をひたすら待ち続けるだけの存在みたい。


だけどあたしはお姫様でもないし、隼人は王子様でもない。


待ってても“幸せになれる”なんて保障は、どこにもない。



『いい加減にしろよ!!
アンタは大切にされてるだろ?!』


「…何を信じれば良いの…?
他の女が居て、何が“大切”なの?!」


唇を噛み締めた。


結局マツも隼人も、同じ言葉ばかりであたしを縛る。



『隼人さんは、アンタを守るためにヤりたくもねぇことヤってんだろ?!
頼むから、信じて待っててやれよ…!』


「…どーゆーこと…?」



“あたしを守るため”って何…?



『…悪ぃ、俺からは何も言えない…。
聞かなかったことにしてくれない…?』


瞬間、ハッとしたようにそう言うと、マツはバツが悪そうに唇を噛み締めた。


そしてそれ以上、口を開くことはなくて。



「二人して一体何を隠してるの?!
あたしに関係あることなの?!
だったら話してよ!!」


『…ホント、ごめん…。』


「―――ッ!」



その瞬間、涙が溢れた。


あたしを守る為に何かをしているのに、あたしには何も話してくれない。


なのにただ、“信じて待つ”なんて、そんなこと出来る訳がないよ。



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