粉雪
何も言わず、ただマツはあたしを見つめて。
そしてゆっくりと、選び出したように言葉を紡ぐ。
『…俺と…逃げる…?』
「―――ッ!」
その目に、言葉を失った。
そうすればきっと、この現実からは逃げられるだろうけど。
きっと今よりはずっと、幸せで居られるんだろうけど。
あたしも隼人もお互いに、
お互いなしでは生きられないところまで来てしまってるんだ。
「…ごめん、それは出来ないよ。
アンタが“信じて待て”って言ったんでしょ?
それに多分アンタ、そんなことしたらホントに殺されるよ?」
“じゃあね”と言って、背中を向ける。
『じゃあ―――!』
「ごめん。
聞かなかったことにするから。」
その言葉を遮り、バタンとドアを閉めた。
マツなんかじゃ、隼人の代わりにはならない。
大丈夫。
あたしはまだ、大丈夫。
もはやそれは、呪文の様で、自分を保ち続けられる唯一の言葉だった。
―ガチャ…
「…何コレ…?!」
リビングの光景に、言葉を失った。
強盗にでも入られたみたいに、家中の食器が割られ、散乱していたのだ。
隼人しかいない。
でも、こんなことをする理由もわからない。
絶望感の中、一人でガラスの破片を拾い続けた。
悔しくて、悲しくて…
籠の中の鳥で居続けるあたしにはもぉ、
少しだけ期待していた“未来”なんて存在していないように思えて。
「―――ッ!」
指先から流れる血に、自然と心が穏やかになった。
そしてゆっくりと、選び出したように言葉を紡ぐ。
『…俺と…逃げる…?』
「―――ッ!」
その目に、言葉を失った。
そうすればきっと、この現実からは逃げられるだろうけど。
きっと今よりはずっと、幸せで居られるんだろうけど。
あたしも隼人もお互いに、
お互いなしでは生きられないところまで来てしまってるんだ。
「…ごめん、それは出来ないよ。
アンタが“信じて待て”って言ったんでしょ?
それに多分アンタ、そんなことしたらホントに殺されるよ?」
“じゃあね”と言って、背中を向ける。
『じゃあ―――!』
「ごめん。
聞かなかったことにするから。」
その言葉を遮り、バタンとドアを閉めた。
マツなんかじゃ、隼人の代わりにはならない。
大丈夫。
あたしはまだ、大丈夫。
もはやそれは、呪文の様で、自分を保ち続けられる唯一の言葉だった。
―ガチャ…
「…何コレ…?!」
リビングの光景に、言葉を失った。
強盗にでも入られたみたいに、家中の食器が割られ、散乱していたのだ。
隼人しかいない。
でも、こんなことをする理由もわからない。
絶望感の中、一人でガラスの破片を拾い続けた。
悔しくて、悲しくて…
籠の中の鳥で居続けるあたしにはもぉ、
少しだけ期待していた“未来”なんて存在していないように思えて。
「―――ッ!」
指先から流れる血に、自然と心が穏やかになった。