粉雪
それから、地元では有名なカニ料理の店に連れて行かれた。


“好きなの頼めよ”なんて言う隼人に、さすがのあたしも戸惑う。


並べられていた料理は、

どれから手を付ければ良いかわからないほど、豪勢そのものだった。



「お腹イッパイなんですけど~!」


元々食べる方ではないあたしは、嫌味のように隼人を睨み付ける。



『だって、食いたかったし!(笑)』


「…アンタ、お金持ちなの?」



怪しさを倍増させていたセカンドバッグもサングラスも、

全てがブランド物で統一されており、

その上昼ごはんでカニなんか食べているやつは、

あたしの中では“金持ち”以外の何者でもなかった。



『あははっ!そんなんじゃねーから!』


そう言いながら、隼人はCDケースから一枚のCDを抜き取った。



どこがだよ。


口元を引き攣らせながら、その動きを目で追う。



「GLAYじゃん!
しかも、デビュー前のアルバム!!」


隼人の手に持っていたCDを見て、あたしは驚きの声を上げた。


キョトンとした隼人の顔は、瞬間、笑顔に変わる。



『知ってるの?』


あたしの言葉に驚いた隼人は、同じように目を輝かせて聞いてきた。



「…アンタ、ファンなの?」


『ちーちゃんもだ!
嬉しいねぇ~!(笑)』



ファンでもない限り知らないようなアルバムを持っていた隼人に、

何となく親近感が生まれた。



『俺、JIROに似てるって言われるんだけど~!』


「…どこが?目ぇ腐ってんじゃないの?
目と鼻と口がついてる以外は、同じところはないね。」



お世辞にも、“似ている”なんて思わない。



『あははっ!ヒドすぎだし!!
まぁ、その辺嘘だけど(笑)』


「…見え見えの嘘つくな。」


やっぱり隼人の煙草を抜き取ったあたしは、睨みを利かせて火をつけた。


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