粉雪
『ハァ?!何、偉そうにしてるの?
あの人に合うのは、このあたししかいないじゃない!
あたしは今、頂点に立ってるのよ?!
アンタなんか所詮、その辺の女と変わりないじゃない!』


「ハッ!それで?」


『―――ッ!』


吐き捨てるように言った。


絶対にあたしは、負けるわけにはいかないんだ。



『賢治くん、毎日激しくて困るのよね~!
今日もこれから同伴なの!』


唇を噛み締めた香澄は、負けじと言い返してきて。


あたしは拳を握り締めた。


本当に、頭がおかしくなりそうで。



「何が言いたいのよ?!」


『“別れろ”って言いに来ただけよ!』


吐き捨てるように言った香澄は、ヒールを鳴らしながら去って行った。


瞬間、一気に全身から力が抜け、その場に崩れ落ちて。


笑いさえ込み上げてきた。


もしかしたらあたしは、守りたいんじゃなくて、負けたくないだけなのかも、って。


吹きぬける風が、ただ冷たかった。


次第に辺りは、暗闇が包み込んで。


あたしごと包み込んでくれれば、どんなに楽だろう。




『大丈夫かよ?!』


慌ててマツが駆け寄ってきた。



「…大丈夫だよ。
アンタこそ、気にする事ないから。
隼人はアンタのこと、信頼してる。
だから、あたしの所に来させたんだよ。」


『アンタ、俺の心配してる場合じゃねぇだろ?!
あんなこと言われたんだぞ?!』


マツは唇を噛み締めた。


荒げる声が、辺り一体に響いて。




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