粉雪
『―――あー!
高速テンション上がるわ!!』


高速に乗ってすぐ、隼人は目を輝かせた。



「…勘弁してよ…。
アンタと事故って死ぬなんて、絶対嫌だし!」


どんどん上がっていくスピードに、口元を引き攣らせてシートベルトを握り締めた。


ヤられるのが先か、事故って死ぬのが先か。



『そうだった!
今日はお客様乗せてるから、安全運転な?』


「…てゆーか今、何キロ出してんの?」


あたしの座っている位置からスピードメーターは見えたが、怖くて聞いてみた。


てゆーか、前を見て運転して欲しい。



『150くらい?(笑)』


「…勘弁してよ…!」


見えたまんまを答えられ、大きなため息をついた。


だけど隼人は、そんなあたしにお構いナシにテンションを上げる。



『ちょっとしたとこで車が一瞬浮いて、ハンドル取られるの!
楽しくない?』


「全っ然!」



そんな恐ろしいことのどこが楽しいのか、理解に苦しむ。



「…アンタがジェットコースター好きなのはわかったから。
頼むからそれ以上はスピード出さないで?」


こめかみを押さえ、確認した。



『え~?リミットカットまでしてんのに?
てゆーか俺、ジェットコースターは嫌いだよ。
高いトコ怖いし!(笑)』



聞いてねーよ!


きっとあたしは、この見ず知らずの男と事故って死ぬ運命にあるのだろう。



だけど不思議なもので、高速でどんなにスピードを出しても、すぐに慣れる。


景色がほとんど変わらないため、あたしは抜き去る車ばかりを眺めていた。





『あー!ちーちゃん!!』


突然、隼人は声を上げた。



「何?!」


驚いて、思わず聞き返す。



『オービスでピースし忘れた!!』


残念そうに言う隼人に、あからさまにため息をついた。



「…アホでしょ。
捕まるよ?」


『あははっ!そーゆーのが楽しいのに!!』



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