粉雪
     ちーちゃんへ



ちーちゃんが“俺と一緒に来ない”という道を選んだことは、正しい事だよ。


自分を責めることなんてないからね?




ちーちゃんの事、本当に愛してた。


気付いたら、ちーちゃんが俺の全てだった。



ちーちゃんが居なくなるのは辛いけど、

ちーちゃんは俺なんかと居ちゃダメだったんだよ。


ちーちゃんは、汚れ切ってた俺に唯一残された白い部分だったから。


だから、ちーちゃんだけは守りたかったんだ。




赤ちゃん…


ホントはすげぇ嬉しかった。


産んで欲しかったんだ…。



だけど、俺はただの犯罪者だから…。


そんなヤツの子供を産ませるなんて出来なかった。


それに、こんな父親を持った子供が可哀想過ぎるから。




俺の父親は、極道モンだった。


組の為に人を殺して、塀の中に入ってしまった。


そして、母親は自殺した…。



それから俺は、親戚中を疎まれながらたらい回しにされたよ。


“畳が嫌い”って言ったことあったろ?


ホントは、昔を思い出すからなんだ…。



だから俺は、何としても成り上がりたかった。


なのに、選んだ道は父親と大差ない…。


結局俺も、こんな道でしか生きられなかった。



俺が墨を入れるのだけは拒んだ理由は、ちっぽけな反抗心だったんだ。


ちーちゃんが聞いたら、笑うよな?




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