粉雪
『うわ~!超ハードじゃん!
じゃあ、何で水曜は休みなの?』


「…あたしにだって、“付き合い”ってものもあるし。」


『あははっ!大変だな、高校生も!(笑)』


「…馬鹿にしてる?」


眉をしかめて聞いた。


だけど隼人は、横目であたしに優しく笑う。



『してねぇよ?むしろ、尊敬!
ちーちゃん、頑張り屋さんだもんな?』


「―――ッ!」



そんなことを言われたのは、初めてだった。


自分が褒められると、変な気分になってしまう。


必死で平然を装いながら、煙を吸い込み吐き出した。




♪~♪~♪

『あ、ちょっとごめん!
静かにしててな?』


隼人の携帯が鳴り、申し訳なさそうに音楽のボリュームを下げながら言って、

電話に出た。



―ピッ…

『―――ハイ、今向かってます。
あははっ、質は良いっすよ?
多分、気に入ると思います。
はい、じゃあ、夕方前には着くんで、その頃また連絡します。』


すぐに電話を切った隼人は、ため息をついて少し面倒臭そうな顔を浮かべた。


その顔を眺めながらあたしは、言葉を選ぶ。



「…あたしを売る気?」


『あははっ!何でだよ!』


「…そんな気がしただけ。」


それだけ言い、煙草を灰皿に押し当てた。


最後に吐き出した煙は、サンルーフから外に出る。



『…そのわりには、落ち着いてるな。』


そう言うと、煙草を咥えてこちらに笑顔を向けた。



「…“売る”って言ったら、ここから飛び降りようと思ってただけだし。
違うんなら良いよ。」


『あははっ!頼むからやめてな?
ココ、高速だし。』


「…売られるよりは良いよ。」



今まで散々どうしようもないことばかりやってきたけど、

売られて一生飼い殺しにされるくらいなら、死んだ方がマシだった。


いや、こんな人生、いっそ死んだ方が楽なのかもしれない。


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