粉雪
粉雪
―――季節はいつの間にか冬になり、
海辺のこの街は、あたしが生まれ育った街よりも寒い。
今日は隼人の一周忌。
外には粉雪が舞っていた。
―カラン…
『さっむ!』
「あっ!マツ~♪
遅いよ~!」
上着の襟を立てて入ってくるマツを、笑顔で出迎えた。
「…ねぇ、買って来てくれた?」
『…そうだよ、すっげぇ探し回ったんだけど!
何だよ、“金平糖買って来て!”って?!』
「あははっ!食べたかったの♪」
買い物袋を受け取り、マツに笑顔を向けた。
『…あの人、そんなモン好きじゃねぇだろ?』
「…優しいパパなんだよ、隼人は…。」
少し気を使ったように言うマツをいつもの席に通した。
瞬間、マツは眉をしかめて。
『…“パパ”って何…?』
「…今日、一周忌でしょ?
多分今、あの人空の上で赤ちゃんと居るから…。」
『オイ―――』
「こーちゃんもいらっしゃい♪
寒かったでしょ~?」
マツの言葉を遮り、他の客に笑顔を向けた。
このお店を立ち上げる前、海の見える丘に墓地を発見し、隼人をそこに埋葬した。
あたしが死んだら、“小林家の墓”に一緒に入れてもらう予定だ。
“小林千里”
いつの間にか、そんな風に名乗っていた。
海辺のこの街は、あたしが生まれ育った街よりも寒い。
今日は隼人の一周忌。
外には粉雪が舞っていた。
―カラン…
『さっむ!』
「あっ!マツ~♪
遅いよ~!」
上着の襟を立てて入ってくるマツを、笑顔で出迎えた。
「…ねぇ、買って来てくれた?」
『…そうだよ、すっげぇ探し回ったんだけど!
何だよ、“金平糖買って来て!”って?!』
「あははっ!食べたかったの♪」
買い物袋を受け取り、マツに笑顔を向けた。
『…あの人、そんなモン好きじゃねぇだろ?』
「…優しいパパなんだよ、隼人は…。」
少し気を使ったように言うマツをいつもの席に通した。
瞬間、マツは眉をしかめて。
『…“パパ”って何…?』
「…今日、一周忌でしょ?
多分今、あの人空の上で赤ちゃんと居るから…。」
『オイ―――』
「こーちゃんもいらっしゃい♪
寒かったでしょ~?」
マツの言葉を遮り、他の客に笑顔を向けた。
このお店を立ち上げる前、海の見える丘に墓地を発見し、隼人をそこに埋葬した。
あたしが死んだら、“小林家の墓”に一緒に入れてもらう予定だ。
“小林千里”
いつの間にか、そんな風に名乗っていた。