粉雪
『…てめぇ、俺の話無視すんじゃねぇよ!』
煙草を咥えたマツは、あたしに睨みを利かせた。
どうにもマツは、気が短い。
「…ねぇ、マツ…。
その顔、怖いからやめてくれない?
聞きたいことあるんなら、お店終わってからにしてよ。」
それだけ言い、マツに背を向けた。
『―――ねぇ、マツさん!
マツさんのタイプってどんな人?
やっぱ、ママみたいな人~?(笑)』
空気を読まないルミは、マツに声を掛けて。
カチッとマツの、ライターの音が響いて。
『…全然違う。
俺はむしろ、頭カラッポですぐヤらせてくれる女の方が好きなんだよ。
つーか、用事思い出したから、また来るわ。』
それだけ言ってマツは、店を出た。
戸惑うようにルミは、その背中を見送る。
『…ママ、マツさん怒ってなかった?』
不安そうに、ルミが聞いてきて。
あたしはため息を混じらせた。
「…多分ね。
でも、ルミちゃんが気にすることじゃないよ。
今日は、“特別な日”だからさ。」
少し笑いかけあたしは、煙草を咥えた。
強い風がカタカタと窓を揺らし、真っ暗闇に映えるように雪が舞って。
“寒いね”って言葉が日常になったのは、いつの頃からだろう。
隼人が居ない日常に諦めを感じるようになったのは、いつの頃からだろう。
それでもあたしは、隼人のことを忘れたくなかった。
忘れることなんか、出来るはずがなかったんだ。
寂しがり屋のあの人のことをあたしまで忘れてしまったら、
きっと本当に誰も知らなくなるから。
あの人の存在が、この世に確かにあったことを。
証明出来るのはきっともぉ、あたしだけだろうから。
煙草を咥えたマツは、あたしに睨みを利かせた。
どうにもマツは、気が短い。
「…ねぇ、マツ…。
その顔、怖いからやめてくれない?
聞きたいことあるんなら、お店終わってからにしてよ。」
それだけ言い、マツに背を向けた。
『―――ねぇ、マツさん!
マツさんのタイプってどんな人?
やっぱ、ママみたいな人~?(笑)』
空気を読まないルミは、マツに声を掛けて。
カチッとマツの、ライターの音が響いて。
『…全然違う。
俺はむしろ、頭カラッポですぐヤらせてくれる女の方が好きなんだよ。
つーか、用事思い出したから、また来るわ。』
それだけ言ってマツは、店を出た。
戸惑うようにルミは、その背中を見送る。
『…ママ、マツさん怒ってなかった?』
不安そうに、ルミが聞いてきて。
あたしはため息を混じらせた。
「…多分ね。
でも、ルミちゃんが気にすることじゃないよ。
今日は、“特別な日”だからさ。」
少し笑いかけあたしは、煙草を咥えた。
強い風がカタカタと窓を揺らし、真っ暗闇に映えるように雪が舞って。
“寒いね”って言葉が日常になったのは、いつの頃からだろう。
隼人が居ない日常に諦めを感じるようになったのは、いつの頃からだろう。
それでもあたしは、隼人のことを忘れたくなかった。
忘れることなんか、出来るはずがなかったんだ。
寂しがり屋のあの人のことをあたしまで忘れてしまったら、
きっと本当に誰も知らなくなるから。
あの人の存在が、この世に確かにあったことを。
証明出来るのはきっともぉ、あたしだけだろうから。