粉雪
いつもより早く店を閉め、マツに電話をかけた。


マツはマツで、子供みたいなところがあるから。



―プルルルル、プルルルル…

『…何?』


通話ボタンを押すなり、電話口からは低い声が聞かれて。



「…怒んないでよ。
お店終わったから、一緒に飲もう?」


少しだけ気を使って聞いた。



『…わかったよ。』


少しの沈黙の後、そんな声が聞こえて。


電話を切り、金平糖を見つめた。


店内は静寂が包み、暖房をつけてるはずなのに何故か肌寒く感じて。


余計に独りぼっちを感じさせられる。





―カラン…

「おかえり。
まだ雪降ってた?」


『…あぁ…。』


無言で戻ってきたマツは、飲んできたのか赤い顔をしていた。


どう見ても、やっぱりまだ怒っているみたいで。


諦めあたしは、ゆっくりと口を開いた。



「…あたし、隼人の赤ちゃん出来てたんだ。
でも、“おろして”って言われたからおろした。」


瞬間、マツは目を見開いて。


言葉を探すようにして、その口が動く。



『…何だよ、それ…?!』


「…金平糖は、赤ちゃんの為なんだ…。」


あたしの言葉に、瞬間、マツは拳を握り締めて。



『お前、何やってんだよ?!
何であんな男の為にそこまで出来るんだよ?!』


マツの荒げる声が、静かな店内に響く。



「…隼人の事悪く言わないでよ…。
あの人も…苦しんでたんだよ…。」



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