粉雪
「…隼人やマツや…香澄が集めた情報は、多分間違ってる。
獅龍会の内部のことは知らないけど、隼人を狙ったチンピラは、河本の指示じゃなかったんだよ。」


『どーゆー意味だよ?!
河本が…そんなこと言ったのか?!
そんな話、信じられる訳ねぇだろ?!』


あたしの言葉に、マツは声を荒げて。


だけどあたしは、静かに首を横に振って。




「…ホントだよ、多分。
本当の黒幕は、香西組長だった。
あの事件の後、河本と組長がドンパチやらかしたのが、何よりの証拠だよ。
河本が言うには、“俺と小林を殺し合いにでもさせようとしたんじゃねぇのか?”って。」


『…そんな…』


マツは、顔を歪ませて。


そして唇を噛み締めながら、顔を俯かせた。



『…そっか。
でもそれで、ようやく全部のつじつまが合うわ。』


短くなった煙草を灰皿に押し当てながら、マツは悔しそうに呟いた。



『…隼人さんが刺されそうになった後もな、何度か河本と会ったんだ。
けどアイツ、“何も知らねぇ”って顔してたから。
飼い殺しにされるだけだと思ってたけど、ホントにアイツ、何も知らなかったんだな。』


そう言うと、自嘲気味に笑って。


本当は、言ってこんな顔をさせたいんじゃないのに。



『…このCD-ROMな?
お前らが飛んだ後、警察に渡すように言われてたんだ。
それが、隼人さんとお前が殺されずに済む、唯一の賭けみたいなモンだった。』


「―――ッ!」


『…けど、隼人さんが殺されて、意味なくなっちまったけどな…。』


「…隼人は…そこまでしてくれてたんだね…。」



獅龍会にガサが入れば、容易にあたし達に手出しは出来なくなる。


それどころか、逮捕者まで出ただろう。


全部、あたしを守るためだったんだね。




『…コレは、俺が大切に保管しといてやるよ。
命懸けで集めた情報だから、捨てるわけにもいかねぇだろ?
でも、お前が見たって良いことねぇから…。』


「…うん、そーしてくれると嬉しいよ。」


あたしの言葉を聞き、マツは再びバッグにCD-ROMをしまった。




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