粉雪
―――それから車は高速を下り、一般道に入った。


街を抜け、次第に辺りには民家もなくなっていく。


まだ夕方だというのに、辺りは真っ暗闇に包まれた。


それだけのことで、急に不安になる。




『山登ったら着くから。』


「…山の上で何やるの?」


『あー…、ちょっとな!
人に見られても困るし。』



隼人は確実に、ヤバイことをしている。


そのことを確信したあたしは、何も聞かなかった。


だけど何故か、“ヤられる”と思うことはなくなっていた。



『そんなことよりさぁ、この後何食べるか考えといてね?』


「…うん。」








―バタン!

『…ちょっと待っててな?』


車は、山の頂上にある展望台の駐車場に停まり、隼人は車を降りた。


見渡すと、数台の車の中に、一台だけ隼人と同じように黒塗りの怪しい車があった。


多分、あれが取引の相手だろう。


隼人は車のトランクからアタッシュケースを出し、黒塗りの車の元に向かった。



やっぱり、か。


それだけ分かれば、もぉ十分だった。


何も見ないようにシートを倒し、横になって目を瞑った。


繰り返されるバラードは眠気を誘い、身を委ねるようにして意識を手放す。



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