粉雪
『…本当だよ。
でも、結局隼人さんがまた上手いこと言って、繋ぎ止めたんだ。
まだ、利用するつもりだったらしい…。』


「―――ッ!」



あたしは、本当の隼人の姿なんて、何も知らなかった。


あたしの知ってる隼人は、あたしの前だけで優しく笑っていたから…。


でもきっと、それも全てあたしのためだったんだろう。



『…すぐにお前のトコに帰ったんだよ。
“ちーちゃんが無事で良かった”って。
“あんな女どーなっても構わねぇけど、ちーちゃんに何もなくて良かった”って…。』


「―――ッ!」



香澄は、あたしの身代わりだったの…?


一歩間違えば、あたしがヤられてたかもしれないの…?



『…結局、隼人さんは最初から最後まで、お前しか見えてなかったんだよ。』


「―――ッ!」



本当に、隼人らしい…。


たとえそれがどんなことだろうと、隼人はあたしのためなら何でもして。


だけどそれが、隼人の愛し方なんだ。




「…あたし達が別れてれば、最初から誰も傷つかなくて済んだのかもしれないね…。」




あたしを守るために、隼人は香澄を利用していた。


そうとは知らず香澄は、隼人にただ都合良く利用されていただけ。


あたしは勝手に傷ついて。


隼人はそんなあたしを見るに耐えられなくて、罪悪感からシンナーを吸っていた。


マツは、そんなあたし達を何も言わずに見守っていた。



なのに結局、集めた情報はどこまで真実かなんてわからないなんて。



本当にあたし達は…


何をやっていたんだろう…。




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