粉雪
部屋
『―――ココ、俺のマンション。』
「あっそ。」
1階が丸々駐車場になっているそのマンションに車を停め、男は車から降りた。
その後ろを、無言のあたしが続く。
響くヒールの音は、だけど雨音に簡単に掻き消されてしまう。
相変わらず雨は止まず、住宅街には人影もない。
悪いことをしていても、誰にも見られなければ、
少しだけ罪悪感も薄れる気がした。
一緒にエレベーターに乗り、目線を落とした。
あたしは、顔を見ることさえしない。
『…なぁ、名前は?』
「あたし、千里。」
『…そっか、俺は隼人。』
興味もない。
行きずりの男の名前なんか聞いたって、明日になれば忘れてるんだから。
密閉された空間は息苦しく、背をつく壁が冷たかった。
エレベーターは4階で止まり、男が降りるとあたしも後に続いた。
整然と並ぶ部屋のドアは、まるでラブホテルのようだ。
―ガチャ…
奥から2番目の部屋の前で足を止めた男は、
ポケットからキーケースを取り出し、部屋の鍵を開けた。
『入れよ。』
男の後に続き、あたしは相変わらず無言で足を進めた。
つけられた電気に目を細め、入り口で立ち尽くす。
『そこで待ってろよ!
今、タオル持ってきてやるから。』
見渡すと、部屋の中には何もなかった。
パソコンの灯りだけが部屋を照らし、
開け放ったままの隣の部屋にダブルベッドがあるだけ。
本当に、怪しい。
およそ、人が普通に生活するような部屋ではなかった。
「あっそ。」
1階が丸々駐車場になっているそのマンションに車を停め、男は車から降りた。
その後ろを、無言のあたしが続く。
響くヒールの音は、だけど雨音に簡単に掻き消されてしまう。
相変わらず雨は止まず、住宅街には人影もない。
悪いことをしていても、誰にも見られなければ、
少しだけ罪悪感も薄れる気がした。
一緒にエレベーターに乗り、目線を落とした。
あたしは、顔を見ることさえしない。
『…なぁ、名前は?』
「あたし、千里。」
『…そっか、俺は隼人。』
興味もない。
行きずりの男の名前なんか聞いたって、明日になれば忘れてるんだから。
密閉された空間は息苦しく、背をつく壁が冷たかった。
エレベーターは4階で止まり、男が降りるとあたしも後に続いた。
整然と並ぶ部屋のドアは、まるでラブホテルのようだ。
―ガチャ…
奥から2番目の部屋の前で足を止めた男は、
ポケットからキーケースを取り出し、部屋の鍵を開けた。
『入れよ。』
男の後に続き、あたしは相変わらず無言で足を進めた。
つけられた電気に目を細め、入り口で立ち尽くす。
『そこで待ってろよ!
今、タオル持ってきてやるから。』
見渡すと、部屋の中には何もなかった。
パソコンの灯りだけが部屋を照らし、
開け放ったままの隣の部屋にダブルベッドがあるだけ。
本当に、怪しい。
およそ、人が普通に生活するような部屋ではなかった。