粉雪
「…“貯金しろ”って、さっき言ったじゃん。」


車に戻り、煙草を咥えてため息をついた。


だけどこんな台詞、奢ってもらったあたしが言って良いのかもわからない。



『良いんだよ。
ちーちゃんも、もぉわかってるだろ?』


そう言うと、隼人は諦めたようにシートに身を預ける。



『俺が稼ぐ金は、真っ当な金じゃないから。
ちょっとは社会に還元しないとな?』


そしてあたしと同じように煙草を咥え、少し困った顔で笑った。


その悲しそうな顔は、何故かあたしの胸を締め付けて。


いつも先に逸らすのは、あたしの方なんだ。



「…お金に“綺麗”も“汚い”もないよ。
それこそ綺麗事だよ。
泡銭でも、1万円は1万円だから。」


『―――ッ!』



あたしだって時には、お金のために汚い事だってやってきた。


だから、隼人のお金を“汚い”なんて思うことは出来なかった。


あたしの言葉に目を見開いた隼人は、次の瞬間にはまたいつもの笑顔に戻って。


そして、優しく言葉を紡ぐ。



『…ありがとな、ちーちゃん…。』


力なく呟いた隼人の顔から、目を逸らすことが出来なかった。


何故か早くなる心臓の音に戸惑いながら、振り払うように煙を吐き出した。



「…帰ろうよ、地元に…。」


『…だな。』



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