粉雪
『―――酒井、もぉあがって良いよ!
悪いな、高校生なのに10時過ぎても働かせて。』


マネージャーはあたしのお盆を受け取り、両手の平を顔の前で合わせた。



「気にしないでくださいよ。
ジャーマネも頑張ってくださいね?
お先です♪」



マネージャーはいつも、あたしの心配をしてくれていた。


本当に世話焼きなオッサンだけど、不思議とこの人のことは嫌いだとは思わなかった。


だからあたしは、この人を“ジャーマネ”なんて呼んでいた。



てゆーか、時間ヤバイ!


時計を見ると、20分も過ぎていた。


足早にロッカーに向かい、隼人に電話を掛けた。




―プルルルル…

『はいよー!』


「ごめん、抜けられなくて遅くなった!」


言いながらあたしは、携帯を耳に当てて、服を脱いだ。



『ははっ、良いよ、仕事だし。
外居るから。』


「うん、今から出るわ!」


電話を切って上着を羽織り、ため息をついた。


一応クリスマスイブだってのに、あたしはこんな格好だ。


コートとバッグを小脇に抱え、急いで裏口から外に出た。


辺りを見回すと、道路に路上駐車している隼人の車を発見し、急いで駆け寄った。





『―――うわっ!ちーちゃん早いじゃん!
また、化粧直してくるのかと思った!(笑)』


あたしの姿を確認すると、隼人は驚きの声を上げた。


だけど車の外で待っている所が、その優しさを感じさせる。



「…じゃあ、直しに戻るわ。」


でも、折角人が急いでやったのに、この言い草はない。



『ダメダメ!時間ないだろ?
乗って!』


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