粉雪
「―――で、あと40分だけど、どーすんの?」


3回目ともなると、隼人はあたしが煙草を抜き取っても、何も言わなくなっていた。


慣れた手つきで火をつけ、煙を吐き出しながら聞いた。



『急かすなよ~。
俺んちでケーキ食うだろ?
で、終わり(笑)』



まぁ、40分じゃそんなもんだ。



『ホントはイルミネーションとかも見たかったのに~!』


そう言うと隼人は、口を尖らせた。


相変わらず子供みたいなその顔を横目で捕らえ、ため息を向ける。



「…あたし、毎日帰り道で見てるし。」


『それはそれだろ?
まぁ、イルミネーションなんて、バレンタインデーまで飾りっぱだしな!(笑)』


そして思い出したように、言葉を続ける。


『そうだ!ちーちゃん、通知表どーだった?』


「…平均すると、5とか?」


あたしの言葉に、隼人は目を見開いて顔を向けた。



『ハァ?!マジで?
実は、秀才なの??』


「まっさか~!
うちの学校、10段階評価なんだよ(笑)」


思わず噴き出しそうになりながら、口元を緩ませた。



『あははっ、そんなことだろーと思ったわ!
まぁ、良いじゃん?平均的だし!(笑)』



授業に出ても、寝ているだけ。


テストの点は悪いけど、課題は出す。


そんなあたしは、昔から平均値以外に貰える数字はなかった。


こんな話でもしていないと、

外を寄り添って歩くカップルを不愉快に見つめてしまいそうになる。


わざと隼人の方に顔を向け、目一杯の笑顔で笑った。


あたしだって、好きでこんな日まで働いている訳じゃない。


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