粉雪
『…そっか、残念。
送るよ。あと、ケーキ持って帰って?』


「…うん。」



今日は隼人に、貰ってばっかりだ。


これの借りは、どーやって返せば良いのか、全然わからないや。



『…スナックだろ?
2時には終わる?』


「…うん、多分ね。」


『飲みに行こうか?(笑)』


「ははっ、勘弁して。」



作り笑顔で必死で働く姿は、隼人になんか見せられない。


てゆーより今は、早くなった心臓を落ち着かせる術ばかりを考えて、

隼人の言葉なんて耳を通り過ぎる。



『…明日もクリスマス本番だってのに、バイトだろ~?』


「うん。
でも、明後日は水曜だし、やっと解放される。」


『そっか。
じゃあ、家具買う約束付き合って!』


「…うん。」



右手にはお菓子のブーツ、左手にはケーキまで持っている。


その上、ダイヤのネックレスなんか貰って、断ることは出来なかった。







―バタン!

「…じゃあ、ありがとね?」


家まで送ってもらい、車を降りた。


襲ってくる冷気により、首元の金属が冷たく存在感を増すのがわかる。



『おー!気ぃつけろよ?
終わる頃また電話するから。
頑張ってな?』


「…ありがと。
でも、あたしに合わせて起きてなくても良いのに。」


『…や、俺は基本、夜型だから!(笑)
つーか、早く家入れよ。寒いから。』


「…うん…。」


振り払うように、あたしはきびすを返す。


今日はまるで冷静でいられなかったのは、クリスマスイブだからなのだろうか。


それとも、相手が隼人だったからなのだろうか。


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