粉雪
『…ちーちゃん、マジで大丈夫?
さすがに心配になるわ…。』


「…うん、でも、まだ大丈夫。
ありがとね。」



“大丈夫”


いつも自分自身に言い聞かせ続けている。



『…やっぱ、水曜やめよ?
ちーちゃん、寝てろよ。
家具なんていつでも買えるし!』


「…大丈夫だよ、昼からなら。
あたしも買い物したいし。」



本当は、買うものなんてなかったけど、

やっぱりダイヤのネックレスの手前、断る訳にはいかなかった。



『…じゃあ、良いけど…。』


「…ごめん、片付け中だし、長電話出来ないんだ!」


戸惑いがちに言う隼人に、わざとらしく声のトーンを上げた。



『そっか、悪ぃ!
また連絡するわ!』


いつものように言って、隼人は電話を切った。



体を動かしていないと、立ったまま寝てしまいそうになる。


散々働いた後のピンヒールでの立ち仕事は、あたしの足を棒にさせていた。




家に帰ると、そのままベッドに倒れこんだ。


メイクだけ落としたけど、冷蔵庫に入れたケーキが気になって仕方がない。


だけど、起き上がる気力もなく、気付いたら眠っていた。





―――次の日は朝からスタンド。


3時に終わって、4時からはファミレスだ。


あたしが掛け持ちをしている理由は、

“法律で8時間以上働いてはいけない”と決められているから。


お金が稼ぎたいあたしは、いわゆる“ダブルワーク”ってやつだ。


それから10時に帰り、化粧を直して母親のスナックに向かう。


クリスマスにここまで勤労なヤツは珍しいと、自分でも思う。


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