粉雪
♪~♪~♪

耳元でうるさく鳴り響く携帯に、手探りで通話ボタンを押した。


―ピッ…

「ん~。」


『…ちーちゃん、寝てた?』


「…隼人かぁ…。」


名前を確認せずに電話に出たあたしは、

頭をポリポリ掻きながらヤル気なくあくびをした。


だけど慣れたその声に、自然と安心してしまう。



「…てゆーか、今何時?」


『1時過ぎてる。』


「ごめっ!急いで用意するから!」


隼人の言葉で、やっと目が覚めた。


無意識に見た時計の針は、とっくに天上を過ぎている。



『ゆっくりで良いよ。
出来たら電話ちょうだい?』


静かに電話を切って、煙草を持って冷蔵庫に向かった。


冷蔵庫を開くと、何故かケーキの箱がたくさんある。



…あぁ、昨日、ジャーマネが残り物くれたんだった…。


隼人のケーキも、未だに手をつけていなかった。



一番奥に入れられていた、隼人から貰ったケーキの箱に手を伸ばした。


未開封だった箱のシールを剥がし、中を開けて見ると、

あたしの言った通りにガトーショコラが入っており、思わず笑顔になった。


急いで顔を洗い、服を着替え、メイクをして髪の毛をセットした。


そしてこのまま電話をしようと思ったが、

携帯を鞄に戻し、ケーキをお皿に移し変えた。


糖分は、大事らしいし。


口の中に広がるチョコの味が自分へのご褒美のように感じて、

何だか嬉しくなってしまった。


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